- 2009.10.30
- CASE COMPANY
- プロボカティブ(挑発的)なクリエイティブ集団 / ワイデン+ケネディ トウキョウ
- “ワイデン+ケネディ”という名前を知らなくても、NIKEの“just do it”キャンペーンを手掛けた会社だと言えば、ほとんどの人がピンとくることだろう。ワイデン+ケネディは、アメリカ・ポートランドに本社に置くクリエイティブエージェンシー。圧倒的に質の高いクリエイティブで、感度の高い企業から絶大な信頼を寄せられている会社だ。東京には今から11年前にオフィスを構え、現在NIKEやGoogle、Playstation (Sony Computer Entertainment)を顧客に持つ。
オフィスは、東京・乃木坂にあった。隣接する地域には国立新美術館や東京ミッドタウンが立ち並んでいる。国際色豊かなこのエリアと同じように、ワイデン+ケネディ トウキョウのオフィスもまた、さまざまな国籍や言語が入り混じった空間である。ここではどんな人々が働き、どのように独創的なクリエイティブが生み出されているのか。アートバイヤー兼プロデューサーである飯田昭雄さんおよび広報の赤枝久季さんに話を伺ってきた。

- 多様な個性が、ハイブリッドを生み出す
- エントランスに飾られている、ずらりと並んだスタッフのポートレイト。じっと前を見据える人、おどけた顔で笑う人……その表情は、実にさまざまだ。ワイデン+ケネディ(以下W+K)の強みは、まさにこの多様な表情=個性にあると言って過言ではないだろう。アートディレクターという肩書で広告の仕事をやる一方で、自らの音楽活動を続ける人がいれば、週末を利用して建築の仕事に携わる人もいる。ストリートカルチャーに精通した編集者がいるかと思えば、自らのブランドを持つデザイナーもいる。
国籍も、バックグラウンドも、皆バラバラ。しかしこの多様かつ強烈な個性が「ハイブリッドを生み出し、他では決して真似できないプロボカティブ(挑発的)なクリエイティブを作り出している」と飯田氏は語る。

- “Walk in stupid every day(常にバカであれ)”
- W+Kには、次のような言葉がある。「Walk in stupid every day(常にバカであれ)」。広告で人に何かを与える立場である以上、リスクを恐れて他と同じことをやっていても、価値がない。たとえ失敗するリスクがあったとしても、人に刺激や驚きを与えるものづくりにこだわりたい。その姿勢が、「Walk in stupid every day」に込められている。
だからこそ、会社はスタッフに「仕事以外で何を持っているのか」を問う。その人がどんなことを考え、何を行動してきたか。その経験や個性を尊重し、仕事をどうデザインするかは、その人自身に委ねることとなる。スタッフは自らのフィールドで得たインスピレーションや経験を、仕事を通じて会社にフィードバックしていく。会社と個人の理想的な関係が、ここにある。
しかし、自由には必ず責任が伴うものである。考えてみれば、仕事において“バカ”を貫き通すことは決して易しいことではないはずだ。高いスキルと自立した精神、それらを併せ持ってこそ、W+Kの「Walk in stupid every day」は実現されている。

- 東京のカルチャーを自ら発信する
- 今から11年前、W+Kは東京に事務所を構えることとなった。オフィスは間借り、クライアントも無いままのスタートである。東京のカルチャーは今よりもっと面白くなる、今やらなければ手遅れになってしまう……その想いが、W+Kの東京進出を突き動かしたのである。
そして今、W+Kトウキョウは自ら東京のカルチャーを発信する担い手として存在している。オフィスは単に“働く場所”としての機能を持つだけでなく、“情報発信のハブ”として機能しているのだ。例えば、W+K東京LAB。音楽レーベルを自ら立ち上げ、アンダーグラウンド・ヒップホップシーンで熱い注目を集める鎮座DOPENESSのアルバムをリリースするなど、東京カルチャーに貢献している。それだけではない。月に一度、ヒューマンビートボックスのAFRAやDJのSKYFISH、ラッパーのZEN-LA-ROCKなどを中心とした、インターネットラジオの中継局もここでおこなわれているのだ。
広告代理店が自ら情報発信者となる意味は、どこにあるのだろうか?飯田氏は、言う。「W+Kがうみだす広告の背景には、素晴らしいカルチャーやコミュニティがたくさん存在する。その背景まで伝えないと、無責任な感じがするんです。もっとカルチャーと寄り添っていたい。ここで働く人は、皆そう思っているんじゃないかな。」

- 面白いことに、とことん貪欲
- W+Kは、遊びを大切にする会社だ。勤続7年の社員には2ヶ月間の有給休暇が認められている他、会社の創立記念日には皆で1日仕事を休み、パーティをしたり旅行に出かけたりしているという。
ある年には、社員がいくつかのチームに分かれ、日本中を飛び回った。各チームには「新潟で美味しいお米と酒をゲットする」「名古屋で上等の鶏肉をゲットする」などあるミッションが与えられる。各チームは1日でそれを達成して戻ってこなければならない、というゲームだ。その日のためにTシャツを作ったり、委員会を設置したり……。面白いことには、とことん貪欲。それが、W+Kのエネルギーの源だ。

- とにかくスタッフの個性が際立った今回の取材。オフィスもそれを象徴しており、飯田氏曰く「デスクはセルフエクスプレッションの場。倉庫でありギャラリーであり、インスピレーションの場所である」という。
機会があれば、W+Kのオフィスを是非訪ねてみて欲しい。そこには東京の“今”、そして“これから”が詰まっているから。今後もどんなカルチャーを発信してくれるのか。W+Kに、ますます期待をしたい。
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アートバイヤー/プロデューサー 飯田昭雄さん 広報 赤枝久季さん

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